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カーチョ・エ・ペペ日本では「カチョエペペ」ともCacio e pepe レシピ

現地の発音:カーチョ・エ・ペーペ

種類
主菜
地域
イタリア・ローマ(ラツィオ州)
分量
2人分
難しさ
ふつう
公開
白い皿に盛ったトンナレッリのカーチョ・エ・ペペ。麺に淡い色のペコリーノのソースがからみ、粗く砕いた黒こしょうとすりおろしたチーズがかかっている。横に赤白のチェックの布、奥に白ワイン

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カーチョ・エ・ペペは、すりおろしたペコリーノ・ロマーノと黒こしょう、パスタのゆで汁だけでソースを作る、ローマのパスタ料理です。カルボナーラやアマトリチャーナと並ぶ、ローマのトラットリア(大衆的な料理店)の定番です。

材料は少ないのですが、なめらかなソースにまとめるには少しこつがいります。チーズが熱くなりすぎるとダマになり、水分が多すぎるとソースが分かれます。ここでは、ローマの料理人たちの助言にならい、ゆで汁を少し冷ましてチーズのクリームを作り、火から下ろしたフライパンでパスタと合わせます。

カーチョ・エ・ペペとは

イタリア語のつづりは「cacio e pepe」です。カーチョはイタリア中部の方言でチーズ、ペペはこしょうのことで、名前は「チーズとこしょう」という意味です。ローマでこの料理に使うカーチョは、羊乳のチーズ、ペコリーノ・ロマーノです。料理サイトのディッサポーレも、カーチョ・エ・ペペのカーチョはペコリーノ・ロマーノだけだと書いています。

羊飼いの料理という言い伝え

いつ、だれが作り始めたのかは、はっきりしていません。よく語られるのは、羊飼いの料理だったという話です。グルメ媒体のスカッティ・ディ・グストは、ローマ近郊の羊飼いが、ペコリーノ・ロマーノと手作りのパスタ、少しのこしょうを持って出かけ、この料理を作ったという言い伝えを紹介しています。料理サイトのディッサポーレも、起源はラツィオの羊飼いの伝統にあると書いています。

一方で、イタリアの情報サイト「イタリー・セグレータ」は、移牧(季節ごとに羊を連れて牧草地を移ること)のあいだに羊飼いが考えたという話を、確かではない伝説としています。スカッティ・ディ・グストの同じ記事も、カルボナーラと同じように、元祖とされる本当のレシピは、だれの手元にもないと書いています。

トラットリアの定番になるまで

イタリー・セグレータによると、カーチョ・エ・ペペは第二次世界大戦のあと、オステリア(ワインと料理を出す庶民的な店)の定番になりました。当時はとても乾いた仕上がりで、客にワインを多く頼んでもらうためだったとも書いています。いまはなめらかなクリーム状の仕上がりが好まれ、ローマの店はそれぞれの作り方を競っています。

テスタッチョ地区で1936年に開いたトラットリア「ダ・フェリーチェ」は、トンナレッリのカーチョ・エ・ペペで知られる店です。ローマ市の観光サイトは、カルボナーラ、グリーチャ、アマトリチャーナとともに、ペコリーノ・ロマーノを使うローマ料理の代表に挙げています。

パスタの形と、いつ食べるか

ローマの店でよく使われるのは、トンナレッリです。パスタメーカーのデ・チェコによると、トンナレッリはアブルッツォ州のマッケローニ・アッラ・キタッラ(弦を張った道具で切る、断面が四角いパスタ)を、ラツィオ州で呼ぶ名前です。テレビ局スカイTG24は卵入りの太いスパゲッティとしていますが、イタリー・セグレータは、伝統を守るなら卵のパスタは使わないとしていて、卵を入れるかどうかは情報源によって分かれます。店では手打ちの生パスタを使うこともあります。太めのスパゲッティ、スパゲットーニもよく使われ、料理雑誌のガンベロ・ロッソが紹介するローマとその周辺の料理人も、トンナレッリかスパゲットーニを使っています。

イタリアでは、コースの最初に出すパスタ料理(プリモ・ピアット)として食べます。

カーチョ・エ・ペペのレシピ:材料(2人分)

準備 10分(チーズをおろし、こしょうを炒って砕く)調理 25分(湯を沸かす時間を含む)難しさ ふつう

パスタをゆでる

  • 水2L
  • 塩(ペコリーノに塩気があるので控えめにする)10g(小さじ2弱)
  • トンナレッリ(乾麺)か、太めのスパゲッティ(スパゲットーニ)(直径2mm前後。ブロンズダイスで押し出したものがよい)(楽天)200g

ソース

  • ペコリーノ・ロマーノ(ブロックを細かくすりおろす。熟成1年前後までのもの)(Amazon|楽天)60g
  • 黒こしょう(ホール)(仕上げ用の1gと一緒に炒って砕く)(Amazon|楽天)2g
  • パスタのゆで汁(クリーム用)(60〜70℃に冷ます)60ml
  • パスタのゆで汁(フライパン用)50ml
  • パスタのゆで汁(調整用)(冷ましたものを30ml取っておく)15〜30ml

仕上げ

  • ペコリーノ・ロマーノ(細かくすりおろす)(Amazon|楽天)20g
  • 黒こしょう(ホール)(ソース用と一緒に炒って砕いたもの)(Amazon|楽天)1g

道具

  • 鍋(直径20cm前後。水2Lでゆでて、ゆで汁のでんぷんを薄めすぎない)(楽天)
  • フライパン(直径26cm。こしょうを炒り、パスタとソースを合わせる)(Amazon|楽天)
  • チーズおろし(粉のように細かくおろせるもの)(Amazon|楽天)
  • すり鉢か乳鉢(炒ったこしょうを粗く砕く)(楽天)
  • デジタルスケール(こしょう3gとチーズを量る)(Amazon|楽天)
  • 料理用温度計(あれば、ゆで汁の温度を確かめる)(Amazon|楽天)
  • 耐熱の計量カップ(ゆで汁を取り分けて冷ます)
  • ボウル(直径18cm前後。チーズのクリームを作る)
  • フォークか泡立て器
  • トング

作り方

  1. ペコリーノをすりおろす

    ペコリーノ・ロマーノ80gを、チーズおろしで粉のように細かくおろす。60gをボウルに入れ、20gは仕上げ用に小皿に分けておく。

  2. 黒こしょうを炒って砕く

    フライパン(直径26cm)に黒こしょうの粒3gを入れ、油をひかずに弱めの中火にかける。フライパンをゆすりながら1〜2分炒り、香りが立って粒がいくつかはね始めたら、すぐにすり鉢か乳鉢に移す。1分ほどおいて粗熱を取り、粒の形が残るくらいに粗く砕く。2gをフライパンに戻し、1gは仕上げ用に取っておく。煙が出るまで炒ると焦げて苦くなる。

  3. パスタをゆでる

    鍋(直径20cm)に水2Lを沸かし、塩10gを入れる。パスタ200gを入れ、ときどき混ぜながら、袋の表示より1〜2分短い時間でゆでる。あとでフライパンで1〜2分仕上げるので、中心に固さが残る状態で引き上げる。

  4. ゆで汁を取り分けて冷ます

    ゆで始めて5〜6分たち、湯が白っぽくにごってきたら、ゆで汁90mlを耐熱の計量カップに取る。そのまま3〜5分おいて、60〜70℃に冷ます。冷め方はカップの材質や室温で変わるので、温度計があれば確かめる。このうち60mlをクリームに、30mlを仕上げの調整に使う。

  5. ペコリーノのクリームを作る

    ボウルのペコリーノ60gに、冷ましたゆで汁60mlを3回に分けて加え、そのつどフォークか泡立て器でよく混ぜる。チーズの粒が見えなくなり、すくうとゆっくり流れ落ちる、もったりとしたクリームになればよい。糸を引いたり、かたまりができたりしたら、ゆで汁が熱すぎたしるし。

  6. フライパンでパスタにゆで汁をからめる

    ゆで上がりの1分ほど前に、こしょう2gの入ったフライパンに鍋のゆで汁50mlを加え、弱火で温める。パスタをトングで鍋から引き上げてフライパンに移し、弱めの中火で1〜2分、ゆすりながらからめる。ゆで汁が煮詰まって底に大さじ1ほど残り、パスタの表面にとろりとした膜がついたら火を止める。

  7. 少しおいてから、クリームと合わせる

    フライパンをコンロから下ろし、30秒〜1分おいて、湯気が落ち着くのを待つ。クリームを2〜3回に分けて加え、そのつどトングで底から大きく混ぜて、パスタ全体にからめる。重たくまとまるときは、取っておいたゆで汁を大さじ1(15ml)ずつ、合わせて15〜30ml加えてゆるめる。ソースにつやが出て、フライパンを傾けるとゆっくり流れるくらいがよい。チーズが糸を引き始めたら熱すぎるしるしなので、火には戻さない。

  8. すぐに盛りつける

    温めた皿に盛り、仕上げのペコリーノ20gと黒こしょう1gを散らす。ソースは冷めるとすぐに固まるので、できたてを食べる。

ソースは冷めるとすぐに固まるので、盛りつけたらすぐに食べます。イタリアの公式観光サイト italia.it は、ラツィオ州の白ワイン、フラスカーティ・スペリオーレ・リゼルヴァを合わせています。

炒りたてのこしょうと、ゆで汁、合わせたばかりのフライパンは熱くなっています。こしょうを炒るときは、はねた粒に気をつけ、フライパンの柄は乾いたふきんか鍋つかみで持ちます。

どのチーズを使うか

ペコリーノ・ロマーノとは

ペコリーノは、イタリア語で羊(ペーコラ)の乳から作るチーズのことです。その中でもペコリーノ・ロマーノは、DOP(原産地呼称保護:決められた土地で、決められた方法で作ったものだけがその名前を名のれる EU の制度)のチーズです。チーズ鑑定士の団体 ONAF の資料によると、1955年にイタリアの原産地呼称を受け、1996年に EU の DOP になりました。生産者団体のコンソルツィオ(保護協会)は、1979年にラツィオとサルデーニャの生産者が作りました。

ラツィオ州の農業機関 ARSIAL がまとめた規定では、作れる土地はラツィオ州全域、サルデーニャ州全域、トスカーナ州グロッセート県です。名前に「ロマーノ(ローマの)」とつきますが、ガンベロ・ロッソによると、いまは生産の大部分がサルデーニャ島です。ローマ市の観光サイトは、1884年にローマ市長が市内でペコリーノに塩をすることを禁じ、多くの生産者がサルデーニャへ移ったとしています。

規定のおもな数値は次のとおりです。

項目 規定
原料乳 産地の農場の新鮮な羊の全乳。生乳か、軽く温める処理(テルミゼーション、最高68℃で15秒)
固め方 38〜40℃で、同じ産地で育った子羊のレンネット(乳を固める酵素)のペーストを使う
カード(固まった乳)の扱い 麦の粒ほどに細かく切り、45〜48℃まで温める
塩 表面に塩をすりこむか、塩水に漬けるか、その両方
熟成 テーブル用は5か月以上、すりおろし用は8か月以上
形と大きさ 円筒形。直径25〜35cm、高さ25〜40cm、重さ20〜35kg
脂肪分 水分を除いた重さの36%以上

外皮は薄く、象牙色から麦わら色で、黒や無色の保護剤を塗ることもあります。コンソルツィオによると、円筒の側面には、角の丸いひし形の中に羊の頭と「Pecorino Romano」の文字を入れた刻印が押されます。

味は強く、塩気と、舌を刺すような辛みがあります。ONAF の資料では、熟成の長いすりおろし用ほど辛みが強く、テーブル用は穏やかです。ガンベロ・ロッソは、いまのペコリーノ・ロマーノは昔より塩をする回数が減り、食べやすくなったと書いています。

日本で買うとき

輸入食品店やチーズ専門店、通販で、くさび形に切ったブロックが売られています。「Pecorino Romano」と「DOP」の表示を確かめます。ブロックの外皮に、ひし形と羊の頭の刻印の一部が見えることもあります。

ブロックを買い、作る直前に細かくすりおろすのが基本です。トラステヴェレの店「チェッコ・エル・カレッティエーレ」は、粉に近いほど細かくおろしたペコリーノを使っています。すりおろし済みのパックを使うなら、原材料がペコリーノ・ロマーノだけのものを選びます。

熟成の表示があれば、長すぎないものを選びます。ガンベロ・ロッソが紹介するローマの料理人は、24か月まで、7〜8か月まで、6〜7か月から1年ほど、とそれぞれ勧めています。ローマの店「ロステリア」のルカ・オリオッティは、熟成が進んだペコリーノはゆで汁と溶け合いにくいとしています。化学者ダリオ・ブレッサニーニの説明を紹介する記事も、熟成が進むと水分が減り、ダマになりやすいと書いています。この記事では1年前後までのものを目安にしています。

ペコリーノ・ロマーノの原料乳は、生乳か、テルミゼーションした乳で、低温殺菌(パスチャライズ)とは限りません。この料理ではチーズを65℃より低く保つので、チーズを加熱殺菌したことにはなりません。農林水産省は、妊娠中の人に、加熱殺菌していないナチュラルチーズを避けるよう呼びかけています。妊娠中の人が食べるときは、パッケージの表示を確かめてください。

パルミジャーノ・レッジャーノで代えると

パルミジャーノ・レッジャーノは、牛の生乳から作り、12か月以上熟成させる DOP のチーズです。生産者団体の仕様書では、香りは豊かで繊細、うま味があり、辛みはないとされています。そのためパルミジャーノだけで作ると、ペコリーノの羊乳の香りと強い塩気、辛みがなくなり、穏やかな味になります。

ローマでも、パルミジャーノを少し混ぜる店や料理家はいます。スカッティ・ディ・グストによると、ダ・フェリーチェはペコリーノ70gにパルミジャーノ30gを合わせています。スカイTG24のレシピも、ペコリーノの強い味が苦手なら、ペコリーノを半量にしてパルミジャーノを足してよいとしています。一方で、物理学者たちの論文(後述)は、伝統を重んじる人はペコリーノ・ロマーノDOPだけを使うとし、パルミジャーノを30%まで加えてよいかは意見が分かれると書いています。この記事ではペコリーノ・ロマーノだけで作ります。

パルミジャーノも長く熟成させた硬いチーズなので、熱くしすぎるとダマになる点は同じです。ペコリーノより塩気が穏やかなので、混ぜるときは、仕上げに味をみて塩気を確かめます。

黒こしょう:粒を炒って、粗く砕く

この料理のもう一つの主役が、黒こしょうです。ガンベロ・ロッソが紹介するローマとその周辺の料理人5人のうち、3人がこしょうを炒って使っています。ラツィオ州アクートのレストラン「コッリーネ・チョチャーレ」のサルヴァトーレ・タッサは、こしょうを炒ることはペコリーノよりも大事だと言います。ふたをして油をひかずに炒り、香りが立ったら少し冷まして、すりつぶしています。

砕いてから炒る料理人もいます。マッカレーゼの「オステリア・ディ・マッカレーゼ」のステファノ・ジズムンディは、黒こしょうを砕いてから、小さなフライパンで油をひかずに炒ります。ディッサポーレのレシピは、鉄のフライパンで粒を炒り、乳鉢で砕いています。

この記事では、粒のまま炒ってから、すり鉢か乳鉢で粗く砕きます。粒の形が少し残るくらいにすると、食べたときにこしょうの粒が感じられます。マレーシアのサラワク産の黒こしょうを使う料理人や、四川山椒を少し加える料理人もいます。

量は情報源によって幅があり、4人分で5g、10gとするレシピがあります。この記事では2人分で3gにしました。

料理科学:ソースがダマになる・分かれる理由

チーズのたんぱく質は、熱くなりすぎると固まる

チーズは、カゼインを中心とした乳のたんぱく質の網目に、脂肪と水分を閉じこめたものです。ブレッサニーニの説明を紹介する記事によると、熟成したチーズほど網目がしっかりしていて、ほどくには高い温度が必要です。ところが温度が上がりすぎると、たんぱく質どうしが固まって縮み、中の水分を押し出します。これが、ゆで汁の中にチーズのかたまりが浮く「ダマ」です。チーズとゆで汁をほぼ同量で合わせるとき、ディッサポーレとスカッティ・ディ・グストは65℃を境としています。

2025年に物理学誌『フィジックス・オブ・フルイズ』に出た論文も、でんぷんがないと、熱い湯の中のチーズは65℃前後で大きなかたまりになると報告しています。論文はこの状態を、モッツァレッラのようなかたまりが水に浮かぶことから「モッツァレッラ相」と呼びました。チーズと水は、ふつうの混ざりものとは逆に、ある温度を超えると、温めるほど分かれやすくなります。著者たちは、熱で形が変わったホエイ(乳清)のたんぱく質どうしや、ホエイのたんぱく質とカゼインが寄り集まることが引き金ではないかと考えていますが、観察した結果を細かな仕組みに結びつけるのは難しいとしています。

熟成の長いペコリーノは水分が少ないので、同じ温度でもダマになりやすくなります。

ゆで汁のでんぷんが、かたまりを防ぐ

パスタをゆでると、表面のでんぷんが湯に溶け出し、ゆで汁は白くにごります。論文によると、でんぷんが多いほど、かたまりができ始める温度が上がり、かたまりも小さくなります。ただし論文は、ゆで汁に含まれるでんぷんは少なく、それだけではソースを安定させるのに足りないとも書いています。

ローマとその周辺の料理人たちが、でんぷんの多いゆで汁を使おうと工夫しているのはそのためです。ロステリアのオリオッティは、手打ちのトンナレッリはでんぷんをよく出すとしています。ジズムンディは、ブロンズダイスで押し出し、独特の乾かし方をしたスパゲットーネを選びます。この記事で湯を2Lにとどめ、パスタをフライパンでゆで汁と1〜2分からめるのも、でんぷんを濃くするためです。

冷ましてから合わせる理由

チーズのクリームを作るとき、ゆで汁を少し冷ますのは、合わせたときの温度を65℃より下に保つためです。ローマのトラットリア「グラッポロ・ドーロ」のアントネッロ・マリアーリは、ゆで汁を沸いたまま使わず、ゆでている途中で大さじ1〜2杯を取り、ボウルで少し冷ましてからペコリーノと合わせると言います。

冷たいチーズと合わせれば温度は下がりますが、沸騰に近いゆで汁をそのまま使うと、ダマになる境目の65℃に近づきやすくなります。クリームを合わせる前に、パスタを火から下ろして30秒〜1分おくのも同じ理由です。論文も、パスタを湯から上げたら長くて1分ほどおいて、急な温度の変化を避けるよう勧めています。

料理科学:でんぷんを量って加える、研究者たちの作り方

ここからは、伝統の作り方とは別の方法です。2025年の論文「カーチョ・エ・ペペのソースの相のふるまい」は、バルセロナ大学、マックス・プランク複雑系物理学研究所、パドヴァ大学、オーストリア科学技術研究所(ISTA)のイタリア人研究者たちによるものです。チーズと水に加えるでんぷんの量を変えて、温度ごとのソースの状態を調べました。この研究は、2025年のイグ・ノーベル賞物理学賞を受けています。

論文によると、でんぷんがチーズの重さの1%より少ないと、ソース全体にかたまりができます。4%を超えると、冷めるにつれてソースが固くなりすぎます。勧めているのは、チーズの重さの2〜3%です。ゆで汁のでんぷんに頼らず、粉のでんぷん(じゃがいもでんぷんかコーンスターチ)を量って加えます。日本の片栗粉は、じゃがいものでんぷんです。

論文が示した2人分の分量と作り方は次のとおりです。

  • 材料:パスタ300g(トンナレッリがよく、スパゲッティやリガトーニでもよい)、ペコリーノ・ロマーノDOP 200g、でんぷん5g(チーズの2.5%)、水50gと100g、炒った黒こしょう
  • でんぷん5gを水50gに溶かし、弱火で温める。とろみがつき、白くにごっていたものがほぼ透明になれば、でんぷんが糊化(こか:水を吸ってふくらみ、とろみが出ること)したしるし
  • 水100gを加えてゆるめ、冷ます(何℃まで冷ますかは、論文には書かれていない)
  • 冷めたでんぷんの液にペコリーノを加え、ブレンダーなどで均一になるまで攪拌する
  • パスタは塩を控えめにした湯でアルデンテにゆで、ゆで汁を取っておく。湯を切ったら、長くて1分ほどおいて冷ます
  • パスタとソースを合わせ、取っておいたゆで汁を少しずつ加えて濃さを整える。盛りつけたら、こしょうと、すりおろしたペコリーノをかける

この方法で作ったソースは、80〜90℃まで温めてもかたまりにくく、フライパンで温め直すこともできるとされています。論文は、プロセスチーズに使われるクエン酸ナトリウムを、チーズの2%以上加えても安定すると報告しています。ただしチーズの風味が少し弱まり、クエン酸ナトリウムは元のレシピにない材料だとしています。一方、でんぷんはゆで汁の形で伝統の作り方にも含まれている、というのが著者たちの考えです。

店や家庭による違い

オイルやパルミジャーノを使う店

ダ・フェリーチェの作り方は、湯を軽く切ったトンナレッリを深皿に移し、こしょうとペコリーノ、パルミジャーノ、エクストラバージン・オリーブオイルを少しずつ加えて混ぜるものです。シェフのマックス・マリオーラも、ボウルでペコリーノとゆで汁にオリーブオイルを少し加えてクリームにし、パルミジャーノを大さじ1ほど足しています。一方、トラステヴェレのチェッコ・エル・カレッティエーレは、オイルもバターもクリームも使いません。

乾いた仕上げと、クリーム状の仕上げ

いまはクリーム状の仕上げが好まれますが、昔ながらの乾いた仕上げにこだわる料理人もいます。グラッポロ・ドーロのカーチョ・エ・ペペは、ペコリーノをクリームにせず、粉のままパスタにつける素朴な仕上がりです。コッリーネ・チョチャーレのタッサは、ペコリーノは溶かすと香りを失うとして、熱い皿に盛ったパスタにこしょうとペコリーノをかけ、混ぜずにパスタを持ち上げて、チーズを下へ落とす方法を紹介しています。

パスタの形

ディッサポーレは、伝統ではスパゲッティかトンナレッリのような長いパスタを使うとしています。イタリー・セグレータは、長いパスタのほかに、リガトーニやメッツェ・マニケ(短い筒形のパスタ)も挙げています。

手に入りにくい材料の代用

  • トンナレッリ:日本では、生のトンナレッリはあまり見かけません。イタリアのメーカーの乾麺のトンナレッリか、直径2mm前後のスパゲットーニを使います。ブロンズダイスで押し出した、表面がざらついたものを選びます。細いスパゲッティでも作れますが、ローマの料理人のなかには、細いものより太いパスタを選ぶ人がいます。
  • ペコリーノ・ロマーノ:手に入らないときは、パルミジャーノ・レッジャーノで作れます。味の違いは「パルミジャーノ・レッジャーノで代えると」を見てください。
  • 黒こしょう(ホール):粒が手に入らなければ、粗挽きの黒こしょうでも作れます。挽いたものは焦げやすいので、炒るなら弱火にして、香りが立ったらすぐに火を止めます。

失敗したときは

  • チーズがかたまりになり、ゆで汁が水っぽく分かれた:ゆで汁が熱すぎたか、火にかけたままクリームを合わせたのが原因です。ゆで汁は60〜70℃に冷まし、パスタは火から下ろして30秒〜1分おいてから合わせます。かたまりが小さいうちなら、冷ましたゆで汁を大さじ1加えて、火から離したまま手早く混ぜます。
  • チーズが糸を引いて、パスタにからまない:これも温度が高すぎるしるしです。それ以上温めず、冷ましたゆで汁を少しずつ加えて混ぜます。
  • ソースがゆるく、皿の底にたまる:ゆで汁が多すぎたか、でんぷんが少なかったのが原因です。フライパンでゆで汁を煮詰め、底に大さじ1ほど残るまでからめてからクリームを合わせます。
  • しょっぱい:ペコリーノ・ロマーノは塩気が強いチーズです。ゆでる湯の塩を減らすか、ダ・フェリーチェのシェフのように、湯に塩を入れずにゆで始め、パスタがでんぷんを出したところで塩を加える方法もあります。

保存

カーチョ・エ・ペペは、作ってすぐに食べる料理です。冷めるとソースが固まり、温め直すとチーズがかたまりになって分かれやすくなります。食べきれる量だけ作ります。

ペコリーノ・ロマーノのブロックは、ラップでぴったり包んで冷蔵庫で保存し、使う分だけすりおろします。

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出典

本文とレシピは、上の情報源を比べたうえで独自に組み立て直したものです。