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フェタ日本では「フェタチーズ」ともFeta

Φέτα

種類
塩水熟成
原料乳
羊乳・山羊乳
産地
ギリシャ・バルカン・ギリシャ(マケドニア、トラキア、イピロス、テッサリア、中央ギリシャ、ペロポネソスとレスボス県。PDO の指定地域)
公開
白い器にのせた長方形のフェタ。真っ白な生地にオリーブオイルがかかり、乾燥オレガノが散っている。奥にカラマタ・オリーブの小鉢と田舎パン、青と白のストライプの布

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フェタは、ギリシャで羊乳、または羊乳に山羊乳を混ぜた乳から作る白いチーズです。外皮がなく、塩水の中で2か月以上熟成させます。はっきりした塩気と軽い酸味があり、サラダにのせたり、焼いたり、パイの具にしたりと、ギリシャの食卓に欠かせないチーズです。

名前は EU の原産地名称保護(PDO)で守られています。ギリシャの外でも同じタイプのチーズが作られてきたため、「フェタ」という名前をめぐって、欧州司法裁判所で長く争われました。日本では「フェタチーズ」の名で売られています。産地と原料乳の表示を見ると、選びやすくなります。

フェタとは

名前の意味

ギリシャ語のつづりは Φέτα です。欧州司法裁判所が2005年に出した発表資料(ギリシャ語版)は、「薄切り」を意味するイタリア語の fetta に由来し、17世紀にギリシャ語に入った言葉だと説明しています。欧州委員会のフェタの紹介ページも、名前は17世紀につけられ、チーズを切り分けることにちなむとしています。

産地

PDO の規定は、ギリシャ農業省の1994年の省令(313025号)が定めています。原料乳は、次の地域のものに限られます。

  • マケドニア
  • トラキア
  • イピロス
  • テッサリア
  • 中央ギリシャ(ステレア・エラダ)
  • ペロポネソス
  • レスボス県

熟成もこの地域の中の施設で行います。クレタ島やキクラデス諸島は地域に入っていません。

歴史

欧州委員会の紹介ページは、ホメロスの『オデュッセイア』で、キュクロプスのポリュペモスの洞窟の場面に出てくるチーズを、フェタの原形として挙げています。アテネのチーズ店主は、羊飼いが季節ごとに移動しながらその日の乳でチーズを作り、村に戻って樽で熟成させてきたと話しています。いずれも伝承として語られている話です。

山がちで乾いたギリシャの土地は牛の放牧に向かず、羊と山羊が飼われてきたとされています。欧州委員会のページは、この土地の植物を食べる羊と山羊の乳が、フェタの味を形づくると説明しています。

原産地呼称の保護と、名前をめぐる裁判

フェタは、ギリシャでは1994年に原産地名称(ギリシャ語の略称で ΠΟΠ)に指定されました。その後の EU での経緯は、欧州司法裁判所の判決と発表資料によると次のとおりです。

年 できごと
1996年 欧州委員会が「フェタ」を PDO として登録(6月12日の規則1107/96)
1999年 デンマーク・ドイツ・フランスの訴えを受け、欧州司法裁判所が登録を取り消す(3月16日)。ほかの加盟国で長く使われてきた名前であることを、欧州委員会が考慮していなかったため
2002年 欧州委員会が改めて PDO に登録(10月14日の規則1829/2002)。ドイツとデンマークが再び訴える
2005年 欧州司法裁判所が訴えを退け(10月25日)、ギリシャの PDO として確定

2005年の判決は、名前が一般名になってはいないと判断しました。理由として、生産がギリシャに集中していること、EU の1人あたりの消費の85%を超える分がギリシャであることを挙げています。ほかの国でもギリシャを思わせるラベルで売られていること、デンマークの法令でさえ「デンマークのフェタ」と国名をつけていたことも、理由にあげられました。バルカンや地中海東部にも似た塩水のチーズはありますが、そこでは別の名前で呼ばれている、とも述べています。

判決によると、フランスでは1931年、デンマークでは1930年代、ドイツでは1972年から、同じタイプのチーズが作られてきました。デンマークの百科事典 Lex によると、5年の移行期間のあと、デンマークのメーカーは「サラダチーズ」「ホワイトチーズ」などの名前で売るようになりました。2022年には、EU の外へ輸出する品に「フェタ」の名を使わせないようデンマークに求める判決も出ています。

作り方

工程の数値は、ギリシャの省令にある規定です。規定にない細かい数値は、ギリシャ地中海大学の教材にある例として分けて書きます。

原料乳

  • 羊乳だけ、または羊乳と山羊乳を混ぜたもの。山羊乳は重さで30%までです。牛乳は使えません。
  • 乳脂肪は6%以上、乳の pH は6.5以上。搾ってから48時間以内に固め始めます。
  • 羊と山羊は、その地域で昔から飼われ、土地の植物を主に食べる品種です。
  • 生乳でも、加熱殺菌した乳でもかまいません。殺菌した場合は、乳酸菌と塩化カルシウム(乳100kgあたり20gまで)を加えてよいとされています。
  • 濃縮、粉乳や乳たんぱくの追加、着色料・保存料は使えません。

大学の教材は、伝統的には冬から春先に作られてきたと書いています。

凝固から成形まで

  • 凝固:レンネットで乳を固めます。レンネットは、乳のたんぱく質(カゼイン)を固める酵素です。規定は「伝統的なレンネット、または同じ働きの酵素」としています。教材の例では、乳を35°Cにして乳酸菌を加え、約45分で固まる量のレンネットを使います。
  • カードを切る:固まった乳(カード)を切り、水分(ホエイ)を出します。教材の例では1.5〜2cmの目に切ります。
  • 型に入れる:穴のたくさんあいた型に入れ、押さずに自然に水を切ります。これは規定で決まっています。教材の例では、型の傾きを30分ごとに変えながら2〜6時間おきます。

加塩

型から出したカードの表面に、粗塩をふります(乾塩)。教材の例では、約7cm角に切り分け、8時間ごとに返しながら塩をふります。塩はカードから水分を引き出し、雑菌の働きを抑えます(McGee)。

熟成

段階 規定の条件 期間
1. 塩水を注いで熟成室へ 塩分7%の塩水。室温18°C以下、湿度85%以上 最長15日
2. 冷蔵で熟成 2〜4°Cで一定、湿度85%以上 合わせて最低2か月

熟成は木の樽か金属の容器で行います。できあがったチーズは、水分56%以下、固形分中の乳脂肪43%以上と決められています。

味と香り、熟成による違い

省令は、味を「心地よく軽い酸味があり、脂肪の分解による風味と豊かな香りがある」と書いています。欧州委員会のページは、白い色と、ほんのりこしょうのような味を挙げています。アテネのチーズ店主は、塩気と熟成からくるはっきりした酸味と、羊乳のバターのようなコクを特徴に挙げています。

フェタの幅は広く、ギリシャの記事は、硬いものとやわらかいもの、ピリッとするものとまろやかなもの、酸味の強いものと塩気の強いものがあると書いています。どれがいちばんかは好みだ、というのがその記事の結論です。

熟成の容器による違いも調べられています。イオアニナ大学の修士論文(2023年)では、同じフェタを木の樽、ブリキの缶、ステンレスのタンクで熟成させて比べました。香りの成分の量は容器で違いましたが、味や香りの官能評価は容器で変わらず、差が出たのは熟成期間でした。硬さともろさは、熟成が進むほど増えました。

選び方

  • 名前と表示:EU では「フェタ」と名乗れるのは、ギリシャの PDO 品だけです。包装の「FETA」「PDO」の文字と、EU の PDO マークを確かめます。
  • 原料乳:羊乳と山羊乳の表示を見ます。牛乳を使ったものは、フェタではない別のチーズです。
  • 加熱殺菌乳か生乳か:規定ではどちらも認められています。妊娠中の人は、加熱殺菌乳のものを選びます。農林水産省は、妊娠中は加熱殺菌されていないナチュラルチーズを避けるよう呼びかけています(リステリア菌のため)。
  • 塩水入りかどうか:塩水ごと容器に入ったものは、開けたあとも塩水に浸けて保存できます。
  • 使い方で選ぶ:ギリシャの記事は、ティロピタ(チーズのパイ)には、ほかの具を消さないまろやかなものを勧めています。
  • 量の目安:ギリシャのレシピでは、サラダ1皿に150g、オーブン焼き(3〜4人分)に200gの塊1つを使っています。

おいしい食べ方

  • ホリアティキ(ギリシャのサラダ):トマト、きゅうり、ピーマン、玉ねぎ、オリーブ、ケッパーを盛り、上にフェタをのせます。オレガノをふり、オリーブオイルをたっぷりかけます。
  • ブユルディ(フェタのオーブン焼き):フェタの塊に、トマトの薄切り、唐辛子、にんにく、オレガノ、オリーブ、玉ねぎをのせ、オリーブオイルをかけます。紙で包んで、200°C(ファン付きオーブン)で約20分焼きます。とてもやわらかくなったら焼き上がりです。パンを添えます。
  • パイ:ティロピタやスパナコピタ(ほうれん草のパイ)の具に使います。
  • エビのサガナキ:トマトで煮たエビに、仕上げ近くでフェタを加えます。早く入れすぎると崩れて形がなくなるため、最後に入れます。
  • 野菜のオーブン焼き:ブリアム(野菜の重ね焼き)などの上にフェタをのせて焼くと、表面がカリッとします。

飲み物について、アテネのチーズ店主は、フェタは塩気が強くワインと合わせにくいと話しています。ギリシャのチーズは、昔からチクディア(ぶどうの搾りかすから作る蒸留酒)と合わせてきたそうです。

チーズの科学:塩水の中で熟成するしくみ

フェタは、乾いた熟成室ではなく、塩水の中で熟成します。外皮はなく、規定でも「外皮なし」「純白」とされています。

熟成の前半は、18°C以下の比較的暖かい部屋で進めます。この間に乳酸菌が乳糖を乳酸に変え、チーズが酸っぱくなります。大学の教材の例では、pH は1日で5を下回り、この段階の終わりには4.4〜4.6まで下がります。そのあと2〜4°Cに冷やし、変化をゆっくりにして2か月以上かけて仕上げます。

塩水の濃さは、チーズの水分と硬さを左右します。乳業の学術誌 Journal of Dairy Science に載った研究(Prasad と Alvarez、1999年)では、牛乳で試作したフェタを8%・15%・18%の塩水で熟成させて比べました。塩水が濃いほど、チーズの水分が少なく、硬くなり、チーズに入る塩も多くなりました。PDO の規定の塩水(7%)より濃い条件での比較です。塩がカードから水分を引き出すことが、その一因です(McGee)。

似ているチーズ

  • テレメス:ギリシャの、塩水に漬けた白いチーズです。PDO ではなく、フェタとして売ってはいけないとされています。
  • 牛乳の白いチーズ:ギリシャでも牛乳から作る塩水の白いチーズが売られています。ギリシャの記事は、フェタより穏やかな味だとしています。
  • デンマークなどの白いチーズ:デンマークの百科事典 Lex によると、デンマークのものは牛乳から作られ、2007年からは「サラダチーズ」「ホワイトチーズ」などの名前で売られています。日本の売り場でも、原産国と原料乳の表示で見分けられます。

保存と切り方

  • 塩水に浸けて冷蔵:開けたあとも、塩水に浸けたまま冷蔵庫に入れます。
  • 塩水が足りないとき:ギリシャの記事は、水1Lに塩80gを入れて沸かし、冷ましてから冷蔵庫で2〜4°Cまで冷やし、そこへフェタを沈める方法を紹介しています。
  • 塩辛いとき:同じ記事は、白いチーズが塩辛いときは、冷蔵する前に水か牛乳に浸けて塩抜きできるとしています。
  • 切り方:もろいチーズなので、包丁で板状や角切りにします。同じ記事は、チーズを何時間も前に切っておくと切り口から水分が逃げるとしています。食べる直前に切ります。

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出典

本文とレシピは、上の情報源を比べたうえで独自に組み立て直したものです。